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【Phillauri】

【Phillauri】

監督:アンシャイ・ラール Anshai Lal

出演:アヌシュカー・シャルマー、ディルジート・ドーサンジ、スーラジ・シャルマー、メフリーン・ピールザーダー

トレイラー

トーリー

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カナダに住むカーナン(スーラジ・シャルマー)は、幼馴染みで長年のガールフレンドであるアヌ―(メフリーン・ピールザーダー)との結婚式を挙げるため、パンジャーブの実家に里帰りした。結婚式も近づいたある日、カーナンは村のパンディット(賢者)に彼は悪い星の元に生まれたため、アヌ―と結婚する前に村の大樹と結婚しなければならないと告げられる。バカバカしいと思いながらもカーナンは渋々と樹との結婚を済ませ、その樹は切り倒された。

その夜、寝ているカーナンの前に若い女性の幽霊(アヌシュカー・シャルマー)が現れる。彼女は大樹の住人で、カーナンはその樹と結婚したのだから、自分と結婚したのだと主張する。途方に暮れるカーナンだったが、幽霊は少しずつ昔を思い出し、語り始める。

幽霊の生前の名はシャシ。パンジャーブの村に住む詩を書くのが得意な女性。シャシが語ったのは彼女と歌手ループ・ラール・フィラウリ(ディルジート・ドーサンジ)との悲しい愛の物語だった。

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アヌシュカー・シャルマーがプロデュースに加わった作品としては【NH10】(2015)に続く2作目。前作がインド農村の暗部を背景にしたスリラーだったのに対し、本作はアヌシュカー自身はなんと幽霊を演じるコメディ・タッチのドラマです。

カナダから結婚のために里帰りした青年が迷信深い家族や村人のために樹と結婚させられてしまったばかりでなく、その樹に住んでいた女性の幽霊につきまとわれるというユーモラスな設定の前半です。アヌシュカーの幽霊は結構キツイことも言いますが、とてもキュート。しかし、幽霊が語る「もう1つの物語」の単なる入り口というだけではありません。こちらのカーナン君、幽霊が出たせいでアヌーとの結婚に二の足を踏んでいるように見えますが、実はただのマリッジ・ブルーであり、そのへんが上手く描かれています。

「もう1つの物語」は、昔のパンジャーブの農村を舞台にしたラブストーリー。挿入歌「Sahiba」=パンジャーブ四大悲恋の1つ「ミルザーとサーヒバー」が象徴するように、悲しい結末に終わります。その物語をうまく実際の歴史的事件と結びつけるところは鮮やかな手際。さらに、「もう1つの物語」が本当の話(作中でですが)であったことを、シャシの幽霊以外にもう1つの小物を使って示して見せるところなども粋です。

現代と過去の2組のカップルである4人、いずれも1人で出しゃばることなく、自分の役をきっちりこなすという感じの好演。アヌシュカーはもちろん、ディルジートやスーラジ・シャルマーもとてもしっかりとした演技でした。

決して大作ではありませんが、映画ならではの自由でロマンチックな発想と丁寧な作りとで、とても完成度の高い作品になっています。

音楽

音楽はほとんど無名のシャシュワト・サチデーヴですが、「ゲスト作曲家」として、いま最も勢いのある女性シンガー、作曲家であるジャスリーン・ローヤルが加わっています。パンジャーブの農村の風景が美しい曲が多いです。

「Sahiba」

「Dum Dum」

「Naughty Billo」

プロモ・ソング。

アヌシュカー・シャルマー   シャシ役

アヌシュカーはほぼ出ずっぱりだった【NH10】と違い、現代パートではカーナンのスーラジ・シャルマー、過去パートではループ・ラールのディルジート・ドーサンジを立てるかのような抑えた演技。その辺も自由自在なアヌシュカーはもはや貫禄でしょうか。

ディルジート・ドーサンジ  ループ・ラール役

パンジャービーの歌手で俳優のディルジート。その意味で今回の役はもともと本人と重なる部分が多いのかもしれません。比較的短時間の出演ですが、シャシの影響を受けてアーティストとしても人間としても変わっていく様子を演じています。泥臭いところも上手く出していました。ディルジート、ボリウッドでもさらに先に行けそうです。

スーラジ・シャルマー  カーナン役

見た時には知らず、気が付きもしなかったのですが、カナダ帰りのカーナンを演じたのは、アン・リー監督のハリウッド映画【Life of Pi】(2012)で主役に抜擢された彼でした。改めて【Life of Pi】のトレイラーを見て比べてみましたが、それでも言われないとわからないくらい違います。【Phillauri】では、かなり上手いので只者ではないと思ったのですが、やはり只者ではありませんでした。

樹と結婚させられるカーナン。本作ではユーモラスに描かれていますが、インドではよくある話だそうです。トレイラーの最初でカーナンは「おまえはひどいマングリクだから樹と結婚しなければならない」と言われていますが、マングリク(manglik)とはインド占星術でマンガル(火星)が悪い位置にあるときに生まれた人で、そうした人は結婚に悪影響があるとされています。解決方法としては、プージャー(儀式)、マントラ(呪文)、ある宝石を身に付けるなどいろいろありますが、一番効果的なのはバナナの木や菩提樹と結婚することなのだそうです。そういえば昔、アイシュワリヤー・ラーイもマングリクで、アビシェークとの結婚前に樹と結婚させられたという報道がありました(アイシュ側は否定)。

【Phillauri】

アヌシュカーのキュートな幽霊が見たい人、【Life of Pi】を観た人、ファンタジーと歴史上の事件と結びつけた巧みなストーリーを堪能したい人、お勧めです。